風俗営業 何をすると「接待行為」
私は千葉市中央区富士見で風俗営業専門の行政書士をしているので、スナックやガールズバーの経営者の方から、「具体的に何をすると接待していることになりますか?」と聞かれることがあります。
警察官がお店に来て、「お客を接待してはいけない」と注意を受けたけど、「何を、どこまですると接待になるのですか?」、「また見に来ますと言われたけれど、次に来たら私捕まりますか?」などと相談されます。
経営的にも、売上に関わることなので、とても皆さん真剣です。
接待については、風営法2条3項におおもとの定義があります。
「接待とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」
いわゆる世間で普通に使う意味のビジネスの場などで「得意先をもてなす接待」とは異なります。
この場合の「接待」とは、あくまでもお店側がお客をもてなすことです。
法律の条文に定めると、どうしても難しい言い回しになりがちです。
これだけでは分かり難いので、具体的に何が接待行為となるのか説明します。
風営法の「接待とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」
これだけでは、「歓楽的雰囲気」、「醸し出す方法」が具体的に何を意味しているのかよくわかりません。
そこで、風営法について必要な解釈及び運用の基準を示している、警察庁生活安全局の通達、解釈運用基準に書かれている具体例で説明します。
Contents
接待行為とは
風営法の解釈運用基準
解釈運用基準には、「特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為を行うこと」とあり、具体的ケースごとに示されています。
「特定の客等」に対しての行為であって、不特定の客に対してではありません。
この点は「遊興行為」と異なります。
接待の主体
通常は、お店側の従業員が接待を行うのだが、それ以外にも外部委託した芸者さんやバンケットクラブのホステスが接待する場合もそのお店の接待になります。
客を装った者(サクラ)がお客を接待する場合もそのお店の接待と判断されます。
深夜に、「従業員に客を装わせて」営業する場合は、時間外営業として行政処分の対償となります。
お客に対して接待する側の性別(女性が女性を、男性が男性を)は問われません。
ホステスさんやおなべさんが女性のお客に接待をする場合も、接待になります。
具体的な接待行為の判断基準
談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり,継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待にあたる。
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交的儀礼上の挨拶を交わしたり,若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待にあたらない。
との説明があります。
つまり「特定少数の客の近くにはべり、継続して」会話をすると接待行為になるのです。
近くにはべらない、「カウンター越し」は接待でない?とは、言えません。
カウンター越しでも、特定の客との談笑が継続しているのかで判断します。
ショー等を見せたり聴かせたりする
ただし、ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対して、同時に、ショーなどを見せたり、聴かせたりすることは接待にあたりません。
歌唱等
従業員が客と一緒に歌う(カラオケのデュエット)のは接待行為になります。
また、一緒に歌わずとも、客の近くにはべり、客に歌うことを勧めたり、客の歌に手拍子をとったり、拍手し、褒めはやす行為も接待行為になります。
ただし、カラオケの準備をする行為、お客が勝手に歌うことや客同士のデュエットは接待行為にあたりません。
スナックなどにカラオケが置いてあるからといって、接待行為にあたるとはいえないのです。
ダンス
特定の客の相手となって客にダンスをさせることや客と一緒にダンスをすることは、接待行為にあたります。
遊戯等
従業員が客と一緒にゲームや、競技等をすることは、接待行為になります。
ただし、客同士や客が一人でゲームをしたりすることは、接待にあたりません。
ダーツバーで、客が店のダーツ機で遊ぶ場合は、接待行為にはなりません。
その他
客と身体を密着させる行為、手を握る行為なども接待行為にあたります。
客の口許に食べ物などを差し出して「あ~ん」とするのも接待になります。
ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は接待行為にはあたりません。
接待行為と異なる遊興行為とは
「遊興」とは、
・不特定の客にダンスをさせる行為に限らず。
・不特定の客にショー、ダンス、演芸等を見せる行為
・遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
・不特定の客にカラオケで歌うことを勧める行為
・スポーツ等の映像を不特定の客に見せる行為と応援に参加させる行為
など店側の積極的な働きかけによって客に遊び興じさせる行為をいいます。
まとめ
接待行為ができる営業を行うのであれば風俗営業の許可が必要となります。
「風俗営業の許可を取ると稼ぎ時の夜12時過ぎての営業ができなくなる」からといって、許可を取らずに接待行為をして摘発された場合、刑事罰に処せられます。
逮捕されますし、法定刑は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」です。
また今後、5年間は人的欠格事由に該当し風俗営業許可をとることができません。
仮に風俗営業許可を取っていた場合でも、接待行為をしていると深夜営業はできません。深夜まで営業をしていれば「時間外営業」で行政処分となります。
ただ、よほど悪質だと判断されない限り、逮捕、営業停止処分にはなりません。