風俗営業許可取得マニュアル

知って安心 千葉県の風俗営業許可取得マニュアルと注意点

風俗営業手続専門の当事務所で受ける、相談あるいは業務依頼の多くは、風俗営業の中でも1号営業「社交飲食店営業」に関するものです。

そのため、この「社交飲食店」を中心に説明していきます。

社交飲食店営業は、パブ○○、スナック△△、キャバクラ☆☆等といろいろな店名を付けていても、「客の接待をして遊興又は飲食をさせる」営業形態です。

多くの場合、当事務所への許可取得のご依頼時には、営業する店舗は既に決めていて、建物賃貸借契約も済ませていますので、「店舗を決める前に相談してくれれば良かったのに」とか「手順を間違えなければ、もっと早く申請できていたはずだ」などと、思うことがあります。

ご自分で申請する場合も、風営業務専門の行政書士に依頼する場合でも「より早く」、「より正確に」許可申請をするための手順とポイントを簡潔にまとめてみました。

はじめに営業形態を考える

風営法は、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持・・・(略)・・」を目的としていますので、「営業」に関していろいろな規制があります。

営業形態別に「接待行為」、「営業時間」、「営業制限地域」などについて規制が異なるのです。

規制を受けるということは、メリットやデメリットがそれぞれの営業形態別にあります。

例えば、「お客の近くに座り、談笑する」「お客と一緒にカラオケでデュエットする」などの接待行為をするには、「社交飲食店」の許可がなければ,営業できませんから許可取得の必要があります。

キャバクラやホストクラブは、メリットである接待行為ができる「社交飲食店」の許可をとっています。
しかし、デメリットはこの許可営業では、午前0時以降の営業は禁止されています。(一部地域に限り午前1時までは営業ができます。)

営業できる地域も、商業地域、近隣商業地域などで、住居系の地域ではできません、保全対象施設(学校、保育所、病院など)との距離制限もあります。

パブ、スナック、ガールズバーなどの「飲食店営業」で、深夜も営業する時は「深夜酒類提供飲食店営業」の届出をすると、午前0時以降も営業はできます。
しかし、デメリットはこの営業形態では接待行為はできないのです。

営業できる地域は、社交飲食店と同じですが、保全施設との距離制限がありませんから、近くに病院があっても営業はできます。

同じ店が「許可」と「届出」の両方を兼ねる場合は、接待行為を深夜0時以降もするおそれがあるため、許可申請時あるいは届出時に厳しく指導されます。

このように風営法による規制に違いがありますから、まずはご自分の営業しようと考えている営業形態を決めてから、許可取得に向けての準備を進めて行きましょう。

店舗賃貸契約を結んだ後で、許可取得できない場所とわかったのでは、開業費用と、時間を無駄にしてしまうことになります。

許可取得のための三要件の確認をする

「場所」~営業制限地域の確認

・不動産屋の紹介物件だから大丈夫だ。
・居抜き物件で、前の営業者が許可を取っていた。
・同じ建物内の他のお店が許可を持っている。

などの理由で、営業制限地域の確認をせずに、店舗賃貸借契約を結んでしまうことは大変危険です。

風俗営業ができない地域は、各都道府県の条例で営業制限地域として定められていますから、これを確認することが、はじめの注意すべき点です。

千葉県条例では、都市計画法で規定する
住居専用地域(第一種低層、第二種低層、第一種中高層、第二種中高層)
住居地域(第一種、第二種)
準住居地域が営業制限地域とされています。

これは、営業者みずから店舗予定地の各市町村の都市計画課に、電話で「用途地域」を問い合わせれば確認することができます。

ただし、千葉県での申請に必要な「用途地域証明書」は市町村によって様式が異なるため記載事項内容が違っています。千葉市は、住所地表記でよいのですが、地番表記でなければいけない市町村もあります。
この点も電話で確認しておくと良いでしょう

用途地域が、商業地域、準商業地域、準工業地域等になっている場所は、とりあえず営業制限地域ではありません。

そして次に、保全対象施設が「あるのか、ないのか」ということを検討します。ここで、店舗との「距離の問題」が出てきます。

学校、図書館、児童福祉施設、病院及び診療所などが、保全対象施設といわれるもので、それらの敷地から一定以内の地域では、許可が出ないこととなっています。

千葉県条例では、商業地域は学校、保育所の敷地から七十メートル、近隣商業地域、工業地域等は百メートル以内の地域は、営業禁止です。

大学、図書館、児童福祉施設、病院、診療所(有床施設に限る)に関しては、商業地域は五十メートル、近隣商業地域、工業地域等は七十メートル以内の地域は、営業禁止です。

この確認には、できれば住宅地図を持って店舗の周囲百メートルを、すみずみまで歩いて保全対象施設の有無を確認して下さい。

都市部では、大学のサテライト教室というものが、商業ビルの一室に入っていることがありますから、ビルの中まで調べる必要があります。
図書館も地方公共団体の設置する公立図書館だけでなく、日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が設立する私立図書館も保全対象施設となります。
場合によっては商業ビルの中に設置されているということもあり得ます。

詳しくは「風俗営業 保全対象施設の調査方法」や「よくわかる保全対象施設の具体例」を参照して下さい。

「人」~経営者と管理者(法人の場合は役員(取締役と監査役)全員)

風営法第四条の規定に、犯罪歴等がある者には「許可をしてはならない」とされています。これを「人的欠格事由」といい、列挙されている主なものを以下に記します。

・破産者で復権を得ない者
・一年以上の懲役刑または禁錮刑に処せられた者で五年を経過していない者
・風営法、刑法等に関する罪を犯して一年未満の懲役刑または罰金刑に処せられた者で五年を経過していない者
・暴力的不法行為などを行うおそれがあると認められる者
・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
・心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
・許可の取消処分を受けてから五年を経過していない者
・営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
・法人でその役員に「人的欠格事由」に該当する者がいる場合

ポイントは、罰金刑を受けた場合でも、全てが「人的欠格事由」に該当するわけではないため、その見極めが難しいことです。該当する法律と罪が具体的に定められてはいるのですが、一般人には簡単に判断できませんから警察に相談するのもいいでしょう。

法人の役員の場合にありがちなのが、罰金刑を受けた本人に自覚がなく、申請した後で警察から指摘されるということがあります。

懲役刑や禁錮刑の執行が終わった時から、または罰金を払い終わった時から五年過ぎれば、欠格事由から外れるので許可が取れることになります。

「営業所」の構造上の要件(1号営業の場合)

・客室の床面積が16.5㎡以上あること
・客室の内部が外から見通せないこと
・客室の内部に見通しを妨げるものがあってはいけない
・卑猥な写真、装飾があってはいけない
・客室の出入口に鍵を取り付けてはいけない
・営業所内の明るさを5ルクス以下とならないようにすること

などの基準があります。

衝立や客席と客席の仕切りは、高さが1m以上あると、見通しを妨げるものと判断されます。

以前「上部に透明なガラスをはめ込めば見通しを妨げることはないから、高さが1m以上あっても問題ないか」と尋ねられたことがありました。

この場合もガラス面にポスター等を貼ってしまえば「見通しを妨げる」ことになるので認められません。

社交飲食店許可取得の手順

① 保健所の「飲食店営業許可(正式名食品営業許可)」取得が前提
② 所轄警察署に「風俗営業許可」申請をする。

飲食店営業許可取得

「風営営業者の失敗しない飲食店営業許可取得」を参照して下さい。

ポイントは保健所の「食品営業許可証」と所轄警察署に提出する風俗営業許可申請書の提出書類との間に矛盾がないようにすることです。

「店名が食品営業許可証では【クラブ○○】となっているが、風俗営業許可申請書は【Club○○】」、「食品営業は個人名義で取得しているが、風俗営業許可申請は法人名義」などの点を警察署は申請時にチェックします。

店舗内の計測~平面図等の作成

平面図等作成のため、店舗内をすみずみまで計測します。

事前に大家や不動産屋に建物図面があるか確認するといいでしょう。
図面があれば、計測するのもかなり容易になりますから。

レーザー測定器を使えば一人でも計測できますが、巻き尺の場合は、店舗が広いと一人では難しく、誰か手伝う人が必要になります。

申請時必要書類の収集

住民票 本籍地が記載されていること

最近は個人情報保護のため、普通に住民票を請求すると「本籍地の記載なし」
で出てきますので、必ず「本籍地記載」を確認して請求して下さい。

身分証明書

この場合は運転免許証や保険証などのことではなく、ご自分の本籍地の市町村で発行してもらう証明書です。

注意点は、現住所の市町村ではなく、本籍地の市町村に請求しなければいけないことです。本籍地が遠方の場合、郵送での請求もできますが、その分時間が掛かります。早めの対応が必要です。

詳しくは「風俗営業 最短でわかる身分証明書」を参照して下さい。

登記されていないことの証明書(令和元年12月14日以降 不要)

請求する場合の窓口は、各都道府県にある地方法務局(本局)になります。
法務局の支局や出張所では、受け付けていません。
千葉県の場合は千葉市中央区中央港1-11-3にある千葉地方法務局です。

郵送請求先は1カ所のみで、どこに住んでいても東京法務局です。
〒102-8226
東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
東京法務局 民事行政部 後見登録課
忘れずに、本人確認書類のコピーを同封すること

各種許認可等の申請時に欠格要件の一つである成年被後見人、被保佐人等の登記がされていないことを証明するもので、おおざっぱに説明すると、「単独で(自分一人で)完全に有効な契約などができる資格がある」ということを証明する書類です。

詳しくは「最短でわかる登記されていないことの証明書」を参照して下さい。

法人名義で許可申請する場合は、役員全員(会社の登記事項証明書に記載されている取締役、監査役全員)の上記3つの書類が必要です。

建物の「使用承諾書」

通常は、建物の所有者に風俗営業の営業所として使用するための承諾書を書いてもらいます。
書式がありますので、所有者の印を押してもらえば、いいだけです。
押印してもらう場合、できれば賃貸借契約書と同一のものが望ましいです。

サブリースの場合は、所有者とサブリース者の両者から「使用承諾書」をもらう必要があります。

店舗の建物登記事項証明書(登記簿謄本)と賃貸借契約書のコピー

千葉県内で申請する場合は、建物登記事項証明書と賃貸借契約書は添付書類になります。

建物登記事項証明書は法務局で、誰でも取得できます。1通600円です。

店舗の「使用承諾書」の所有者が誰で店舗を使用させる権限があるのかを確認するための書類です。

場合によっては、所有者とサブリース者との契約書のコピーも必要となります。

法人名義(会社)申請の場合の必要書類と注意すべきポイント

上記書類の他に、会社の全部事項証明書と会社の定款をコピーしたものが必要です。

会社の全部事項証明書(謄本)は、どこの法務局でも、誰でも取得できます。

ここでのポイントは、会社の目的欄に「飲食店営業」が、入っていることです。
入っていなければ会社名義での許可申請は受け付けてもらえません。

管理者の写真2枚

風俗営業の許可がおりると、管理者証が手渡されるのですが、ここに添付する写真が2枚必要となります。

正面無帽の3センチ×2.4センチの大きさで、裏面に撮影日、店名、氏名を記載する。

申請人あるいは管理者の連絡先が携帯電話の時

千葉県の警察署では、本人確認の為(住民票の住所地に住んでいるのかを確認するため)申請人あるいは管理者の申請書に記載する電話番号が、固定電話でない場合、住所あてに届いた本人名の公共料金の請求書のコピー等の提出を求められます。

許可申請書を作成する

許可申請に必要な書類は

 

必要書類

・許可申請書 その1
・許可申請書 その2(A)これは1号営業から3号営業までの書式
・営業の方法 その1
・営業の方法 その2(A)これは1号営業から3号営業までの書式
・メニューの写し
・営業所周辺略図
・用途証明書(千葉県内警察署では原則添付、ただしいすみ市のように発行していない市町村もあります。)
・使用承諾書
・建物登記事項証明書
・建物賃貸借契約書の写し
・営業所平面図、求積図、求積表
・照明器具配置図
・音響設備配置図
・(法人名義での申請の場合)法人全部事項証明書
・(法人名義での申請の場合)法人定款の写し
・住民票(本籍・外国人は国籍、記載のもの)
・身分証明書
・(外国籍の場合)在留カードの表裏両面の写し
・申請人の誓約書
・管理者の誓約書 2種類
・飲食店営業許可証の写し(飲食店営業許可申請書に受付印のある申請書の写し)
・委任状(行政書士が代理申請する場合)

申請書及び添付書類は2穴パンチで穴を開けてひもでつづる。
申請書の様式書類は千葉県警察のホームページから、ダウンロードできます。

許可申請書の記入

申請書記入の注意すべき点は、次の3つ。

① 日付は記入せず空欄のままにしておく。
警察の担当官が申請受理時に初めて記入するように指示されます。

② 氏名は住民票記載通りに記入する。旧字の場合旧字で記入
  例えば、住民票が「澤田」になっているのなら、「沢田」ではダメです。

③ 住所は丁目番地を記入、ハイフンではダメです。建物名も正確に記入する。
  × 千葉市中央区富士見2-21-8-501
  ○ 千葉市中央区富士見二丁目21番8号 都市綜研千葉駅前ビル501

営業所周辺略図

保全対象施設(学校・病院等)との位置関係が記載された図面
営業所を中心に周囲100mと70mの円を書く。

メニューの写し

お客との料金トラブル防止のために営業所内に掲示するか、客席に置くことになっています。

 

申請人の誓約書
・人的欠格事由に該当しないという書面

管理人の誓約書 2種類
・未成年者・人的欠格事由に該当しないという書面

・誠実に業務を行うことを誓約する書面

所轄警察署に申請する

全ての書類が揃えば、申請書を提出しに行きます。

内装やテーブル・イス等が揃っていなくても、検査日が約一ヶ月後なので、検査日までに内装が出来上がり、什器備品が揃うならば、早く許可を取得するため、申請を先にすることもありえます。

営業所を管轄する警察署の生活安全課(セイアン)が申請窓口になります。
担当官が外出している場合があるので、必ず電話で予約をしてから行くこと。

申請書を確認するのに、30分程度かかり問題が無ければ、日付を記入するように指示され、申請手数料(千葉県証紙24000円分)を支払います。

千葉県内警察署はこちらで確認できます

営業所の警察検査

千葉県内の警察署の多くは、申請日から約1ヶ月後に検査になります。
検査日は担当官から電話で連絡が来ます。

行政書士が代理申請した場合は、行政書士に連絡が来ますので、申請人の都合を聞き日時の調整をしてから,担当官に返事をします。

検査は通常所轄署の担当官が1~2名できます、営業所の造作が申請書通りにできているのかを検査します。

千葉県の警察署が行う主な検査項目と手順は、

1.営業所内部を何カ所か計測し、申請図面との相違をチェック

2.客室のテーブル上で照度をチェック(新聞が読める程度の明るさが必要)

3.営業所内の音が外に基準値以上に漏れていないかをチェック

4.テーブル・イスの個数・配置、照明の個数等を申請書との相違をチェック

検査時間は20~30分程度です。

検査が問題なく済むよう、特に以下の点については事前確認して不備な箇所が無いようにしておくことです。

・営業所入り口に「18歳未満の入店はお断り」のプレートが貼ってあるか?
・客室の内部が見通せるか?衝立等1m以上のものは設置してないか?
・照明器具スイッチにスライダックス(調光器)を使ってないか?
・出入口のドアの下に隙間があり、音が漏れないか?
・メニュー表は用意してあるか?
・ワイセツな写真等を飾っていないか?

 

営業所が建物の3階以上か地下1階以上にあるときは、消防署と市町村の建築指導課も検査に来ます。

申請日から許可が下りるまでの標準処理期間は55日です。

許可が下りると、担当官から連絡が来ますので、印鑑を持って取りに行きます。
許可証、管理者証、営業許可番号の書かれた標章(シール)の3点が渡されます。

標章(シール)は営業所のドアの外側に貼り、許可証は営業所内の見やすい場所に掲示しなければいけません。

 ↓標章の見本↓